ホリデー・イン(坂木司) |
ホストクラブを経営しているジャスミンには、人を拾う”拾い癖”があった。だが、誰でも拾うというわけではない。若い男しか拾わない。そんなジャスミンが拾ったのは、何と、おっさんだった!ジャスミンと”おっさん”の出会いを描いた「ジャスミンの部屋」を含む6編を収録。「ホリデー」シリーズのスピンオフ作品。
「ジャスミンの部屋」に登場するおっさん。彼のひと言がジャスミンの心をとらえる。「おかまだが、いい脚だ。」人は、相手の何気ない言葉で心を動かされる時がある。そのタイミングを絶妙に描いたこの話は、読んでいて心がほのぼのとしてくる。ジャスミン、本当にいい人だ!
「大東の彼女」では、ラストの大東の思いが心に響いた。何が不幸で何が幸せなのか?考え始めたらきりがないし、そもそも幸せか不幸かは、同じ事でも人によって受け取り方が違うものなのだ。悩みがあるときはくよくよ考えてばかりいないで、「なるようになるさ!」と多少開き直るのも悪くないかもしれない。
「雪夜の朝」では、人というのは実にさまざまな思いを心の中に抱えて生きているのだと思った。雪夜の心の内にあるものを見抜くジャスミンはすごい!彼女(彼?)もいろいろ苦労してきたのだなと感じた。
「ナナの好きなくちびる」では、人は人と出会うことで救われる時があると感じた。「ナナは、これからも大丈夫!」そう思う。私は人づきあいは苦手だが、「人とつきあうのも悪くないかも♪」と思わせてくれた。
「前へ、進」「ジャスミンの残像」は、ヤマトと進についての話だ。「ワーキング・ホリデー」を読んだときには知ることができなかったふたりのエピソードがほほえましかった。ジャスミンは、こんなヤマトをよく拾ったものだ・・・。人の持っている「何か」を見抜く力があるのか?
どの話も温もりを感じる。読んでいると、心がやさしくなっていくような作品だった。面白かった。
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